緑内障について
自覚症状なく進行する
早期発見がカギとなる目の病気です
緑内障とは
緑内障は、目から入ってきた情報を脳に伝える視神経という器官が障害され、見える範囲(視野)が狭くなる病気です。放置すると失明に至ることもあり、日本人の後天的な失明原因の第1位となっています。
緑内障の症状
緑内障の主な症状は、見える範囲が徐々に狭くなることです。しかし、進行が非常にゆっくりで、両目に同時に症状が出ることが少ないため、初期段階ではほとんど自覚症状がないことが多く、発見が遅れることがあります。
緑内障は、中高年の方に多い目の病気の一つです。自覚症状がない場合でも、定期的な眼科検診を受けることが大切です。
〇 緑内障が進行すると、以下のような症状が現れることがあります。








緑内障の原因
緑内障は、視神経がダメージを受け、視野が狭くなる病気です。主な原因の一つは眼圧の上昇ですが、視神経の脆弱性や、目の中の液体「房水」の排出機能の低下も関係しています。特に、房水の出口である「隅角」が狭くなったり塞がったりすると、房水が溜まり眼圧が上昇しやすくなります。

〇 眼圧とは
眼球の中は、房水という液体で満たされています。房水は、水晶体や角膜に栄養を届け、眼球の形を保つ役割を担っています。
房水は、眼内の毛様体という部分で作られ、眼内に栄養を与えた後、前房に移動し、隅角(線維柱帯、シュレム管)を通って静脈へと流れ出ていきます。正常な眼圧は、一般的に10mmHgから20mmHgの範囲内とされています。
〇 緑内障の疫学
2000年から2001年にかけて岐阜県多治見市で行われた大規模な研究の結果では、緑内障の有病率は40歳以上の男女で約5 %でした。40歳以上の成人では20人に1人が緑内障であるということになります。また、多くの緑内障患者の眼圧が正常範囲内であることもわかっています。
〇 緑内障になりやすい人
特に以下のような方は、緑内障のリスクが高くなります。






〇 緑内障患者が生活習慣で気をつけること
緑内障は生活習慣病ではありません。日常生活において、緑内障に特に悪い影響を与えるような生活習慣は明確にはありません。緑内障と診断されても、基本的に普段どおりの生活を送って問題ありません。
緑内障の種類
〇 隅角とは
虹彩の付け根にある、房水が目の外へ排出される部分のことです。隅角には「シュレム管」という管状の構造があり、その上に網目状の組織である「線維柱帯」があります。毛様体で作られた房水は、角膜と水晶体に栄養を与え、老廃物を受け取った後、隅角へと流れ、線維柱帯を通ってシュレム管へと排出されます。線維柱帯は、房水を目の外へ排出するための通路の役割を果たしています。
開放隅角緑内障
線維柱帯と虹彩の距離は保たれていますが、線維柱帯が目詰まりなどを起こし、房水が排出されにくくなることで眼圧が上昇します。見た目には正常な線維柱帯との区別がつきにくいです。

線維柱帯と虹彩の距離は保たれていますが、線維柱帯が目詰まりなどを起こし、房水が排出されにくくなることで眼圧が上昇します。見た目には正常な線維柱帯との区別がつきにくいです。
閉塞隅角緑内障
虹彩と線維柱帯が接触して隅角が塞がっている状態です。房水が排出できなくなるため、眼圧が上昇します。

隅角が閉塞しています。隅角が閉塞しているとはどういうことかというと、虹彩が線維柱帯と物理的に接触している状態です。房水が虹彩に阻まれて線維柱帯まで到達することができないために眼圧が上昇します。
狭隅角
虹彩と線維柱帯の距離が近い状態です。隅角が閉塞するリスクが高い状態です。

隅角が閉塞しています。隅角が閉塞しているとはどういうことかというと、虹彩が線維柱帯と物理的に接触している状態です。房水が虹彩に阻まれて線維柱帯まで到達することができないために眼圧が上昇します。
緑内障と診断された方は、ご自身が開放隅角、閉塞隅角、狭隅角のいずれであるかを、担当医に確認することをおすすめします。閉塞隅角緑内障の方は、使用できない薬(内服薬や注射など)があるため注意が必要です。
緑内障の検査
緑内障の検査には、以下のようなものがあります。
- 視力検査
- 眼圧検査
- 細隙灯顕微鏡検査
- 隅角検査
- 眼底検査
- 光干渉断層計検査(OCT)
- 視野検査
これらの検査で、視神経の状態や視野の欠損などを確認します。
緑内障の治療
緑内障の治療の目的は、患者さんの視覚の質を維持し、生活の質を保つことです。
緑内障の治療法には、薬物療法、レーザー治療、手術療法の3種類があります。いずれの治療法も、眼圧を下げることを目的としています。
1 薬物療法
主に、眼圧を下げる効果のある点眼薬を使用します。
2 レーザー治療
開放隅角緑内障に対して行うレーザー線維柱帯形成術、閉塞隅角緑内障に対して行うレーザー虹彩切開術、毛様体にレーザーを照射して眼圧を下げる毛様体光凝固術などがあります。
レーザー治療を行うことで、薬物療法による負担を軽減できるというメリットがあります。
3 手術療法
薬物療法やレーザー治療で十分な効果が得られない場合に行われます。
大きく分けて、房水を目の外へ排出するための手術(濾過手術)と、房水の排出をスムーズにするための手術(流出路再建術)の2種類があります。