糖尿病網膜症とは|熊本市中央区のくまがい眼科
糖尿病網膜症について
視界のぼやけや歪み…
放置すれば失明にもつながる目の病気です
糖尿病網膜症とは
糖尿病網膜症は、糖尿病の三大合併症の一つであり、血糖コントロール不良が長期間続くことで、目の奥にある網膜の血管が徐々に損傷を受ける病気です。
当院の位置する熊本エリアにおいても、糖尿病患者数の増加に伴い、糖尿病網膜症を発症する方が少なくありません。
初期には自覚症状がほとんどないため、気づかないうちに病状が進行してしまうことが懸念されます。ここでは、糖尿病網膜症の原因と、どのように病気が進行していくのかについて詳しく解説します。
糖尿病網膜症は、高血糖によって網膜の細い血管がダメージを受けることから始まります。
血管が変形したり、詰まったりすることで、網膜への酸素供給が不足し、酸欠状態に陥ります。この状態を改善しようと、新しい血管(新生血管)が作られますが、この新生血管は非常にもろく、容易に出血を引き起こします。また出血が繰り返されると、網膜にかさぶたのような膜(増殖組織)が形成され、これが網膜を引っ張り、網膜剥離を引き起こす事があります。
糖尿病の罹病期間が長いほど、また血糖コントロールが不良であるほど、網膜症の発症リスクは高まり、血糖コントロ-ルが不十分だと5-10年で発症します。
かなり進行するまで自覚症状がない場合もあり、自覚症状がないからと放置せず、定期的な眼科受診と眼底検査が非常に重要です。
糖尿病網膜症の疫学
Japan Diabetes Complications Study(JDCS)の報告によると、2型糖尿病患者における糖尿病網膜症の年間発症率は約3.83%とされています。また、日本を含むアジア地域全体では、何らかの眼底所見を有する糖尿病網膜症の有病率は約19.9%、増殖糖尿病網膜症は約1.5%、糖尿病黄斑浮腫は約5.0%、視力に影響を及ぼす可能性のある糖尿病網膜症は約5.3%となっていました。
糖尿病網膜症のリスク因子
糖尿病網膜症の発症と進行には、高血糖の状態が最も大きな影響を与えますが、それ以外にも様々なリスク因子が関連しています。血糖コントロールの不安定さ(高血糖だけでなく低血糖も含む)、高血圧、脂質異常症、腎機能の低下といった生活習慣病の合併もリスクを高めます。また、妊娠、身体活動量の低下、長時間の座位、喫煙なども関連が指摘されています。
糖尿病網膜症は、高血糖だけでなく、全身の様々な因子と複雑に関連して発症・進行します。そのため、内科医だけでなく、婦人科医や眼科医が連携し、それぞれの患者さんのリスク因子を把握し、適切な治療と生活指導を行うことが重要です。
糖尿病網膜症の症状と分類
糖尿病網膜症は、初期にはほとんど自覚症状がないことが特徴です。しかし、病状が進行するにつれて、視力低下や視野狭窄などの症状が現れることがあります。これらの症状に気づいた時には、すでに病状がかなり進行している場合も少なくありません。「まだ見えるから大丈夫」という自己判断は非常に危険です。ここでは、糖尿病網膜症の進行度合いによる分類と、それぞれの段階で起こる目の変化について解説します。
糖尿病網膜症は、進行の程度によって大きく3つの段階に分類されます。それぞれの段階で網膜の状態が異なり、治療法も変わってきます。自覚症状がない時期でも、網膜の変化は着実に進行している可能性があるため、定期的な眼科検査が不可欠です。
症状がないからと安心せずに、定期的な眼科受診を心がけてください。



単純糖尿病網膜症
単純糖尿病網膜症は、糖尿病網膜症の最も初期の段階です。高血糖により、網膜の毛細血管が損傷を受け、血管から血液成分が漏れ出すことで、点状や斑状の出血が見られたり、血液中のタンパク質や脂質が網膜に沈着して硬性白斑という白い斑点が現れたりします。この段階では、物を見る中心である黄斑部に異常が及ばない限り、自覚症状はほとんどありません。
単純糖尿病網膜症と診断された場合でも、適切な血糖コントロールを行うことで、網膜症が改善したり、進行を遅らせたりすることが可能です。
前増殖糖尿病網膜症
網膜症がさらに進行すると、毛細血管が詰まり、網膜の神経細胞への酸素や栄養の供給が不足します。これにより、網膜に神経のむくみである軟性白斑や、静脈の拡張などの異常が見られるようになります。網膜の酸素不足を補うために異常な血管(新生血管)を作り出して酸素不足を補おうとする準備が始まります。この前増殖糖尿病網膜症の段階でも、まだ自覚症状はほとんどありません。
前増殖糖尿病網膜症と診断された場合、より厳格な血糖コントロールが求められます。また、病状の進行を注意深く観察するために、定期的な眼科検査が非常に重要です。当院でも、最新の検査機器を用いて網膜の状態を詳細に評価し、適切なタイミングでの治療を提案しています。
増殖糖尿病網膜症
前増殖糖尿病網膜症からさらに進行すると、網膜から硝子体という眼球内のゲル状の組織に向かって、もろい新生血管が生えてきます。この新生血管は破れやすく、眼の中に大きな出血(硝子体出血)を引き起こすことがあります。また、さらに進行すると、増殖膜という膜が網膜の表面を覆い、網膜を引っ張って網膜剥離を引き起こす可能性があります。新生血管自体が発生してもすぐに視力に影響が出るわけではありませんが、硝子体出血や網膜剥離が起こると、急激な視力低下や視野の異常といった自覚症状が現れます。
増殖糖尿病網膜症は、視力に深刻な影響を与える可能性があるため、レーザー治療や硝子体手術といった専門的な治療必要となります。早期に適切な治療を受けることで、失明のリスクを大幅に減らすことができます。


糖尿病黄斑症とは
糖尿病黄斑症は、物を見る上で最も重要な部分である黄斑が、糖尿病によって障害される病態です。黄斑の機能が低下する事により、視力低下を引き起こします。代表的な病態である黄斑浮腫は、黄斑部の毛細血管が障害され、血管から血液中の水分が漏れ出して黄斑部に浮腫を生じた状態です。単純網膜症から増殖網膜症までのどの病期にも発症する可能性があり、糖尿病患者の視力障害の最も多い原因の一つです。
糖尿病黄斑症は、視力に直接影響を与えるため、早期発見と適切な治療が非常に重要です。当院でもOCT(光干渉断層計)などの先進的な検査機器を用いて黄斑の状態を詳細に評価し、薬物療法やレーザー治療など、患者さんの状態に合わせた治療法をおこなっています。
糖尿病網膜症の検査
糖尿病黄斑症は、物を見る上で最も重要な部分である黄斑が、糖尿病によって障害される病態です。黄斑の機能が低下する事により、視力低下を引き起こします。代表的な病態である黄斑浮腫は、黄斑部の毛細血管が障害され、血管から血液中の水分が漏れ出して黄斑部に浮腫を生じた状態です。単純網膜症から増殖網膜症までのどの病期にも発症する可能性があり、糖尿病患者の視力障害の最も多い原因の一つです。
糖尿病黄斑症は、視力に直接影響を与えるため、早期発見と適切な治療が非常に重要です。当院でもOCT(光干渉断層計)などの先進的な検査機器を用いて黄斑の状態を詳細に評価し、薬物療法やレーザー治療など、患者さんの状態に合わせた治療法をおこなっています。
糖尿病網膜症の治療
糖尿病網膜症の治療の基本は、血糖コントロールを良好に保つことです。しかし、病状が進行した場合には、眼科的な治療が必要となります。当院でも、病状に応じてレーザー光凝固術や抗VEGF抗体硝子体内注射、ステロイド注射などの専門的な治療を行っています。これらの治療は、病気の進行を抑え、視力を維持するために非常に重要です。
糖尿病網膜症の治療法には、主に以下のものがあります。それぞれの治療法は、病状の進行度合いや患者さんの状態に合わせて選択されます。治療の目的は、病気の進行を食い止め、可能な限り視力を維持することです。
網膜光凝固術
網膜光凝固術は、レーザーを用いて網膜の一部を凝固する事により、網膜の酸素不足を解消し、新生血管の発生を予防したり、すでに発生した新生血管を縮小させたりする目的で行われます。
網膜光凝固術は、正常な網膜の一部を犠牲にすることで、全ての網膜が障害されるのを防ぐためのやむを得ない治療ではありますが、適切に治療を行うことで、将来的な失明のリスクを大幅に減らすことができます。
硝子体手術
硝子体手術は、レーザー治療では進行を抑えられなかった場合や、すでに網膜剥離や硝子体出血が起こってしまった場合に行われる外科的な治療法です。眼球に小さな穴を3つ開け、細い手術器具を挿入して、眼の中の出血や増殖組織を取り除いたり、剥離した網膜を元の状態に戻したりします。